「ぼく、どうしたらここから出られるんでしょうか」 「どうしたら、な⋯⋯」 「そもそもオメガになってしまったから、こんな不幸に遭ってしまったんですよ。学校ではいるだけで汚い扱いされるし、家ではオメガは産まれないと信じて疑わない親にオメガとなった途端、急に態度を変えて、自分の子どもじゃないと罵声を浴びかせ続けるんです。毎日、毎日⋯⋯」 「そんなこと⋯⋯」 子どもにするべきじゃない。 どんな第二の性であろうと平等であるべきなはずだし、それ以前に一番の理解者であるはずの親が惨たらしく否定することが考えられない。 と、そのようなことを述べようとした口を閉じた。 その第二の性を利用しようとしている奴が口にしていいことではない。 「⋯⋯ぅ⋯っ」 静まり返った部屋にすすり泣く声が聞こえる。 慰めの言葉も今の彼にとっては、無意味に等しい。 仕事を全うしてくれ、と億劫そうに口を開こうとした時、娼年は急に我に返ったかのように目を強く擦り、その手で俊我の裾を掴んだ。 目を丸くしていると、涙で濡れた目と合った。 「あ、あの⋯⋯仕事、としてなのですが⋯⋯。ぼくのお尻に入っている物を⋯⋯ぬ、抜いて、欲しいのですが⋯⋯」 「⋯⋯⋯は？」 恥ずかしげに告げられたことに意味が分からないと、怪訝そうな顔をした。 それが娼年を怖がらせてしまったようで、「すみません、なんでもないです」と手を離した。 「⋯⋯いや、俺の方こそ悪いな。⋯⋯で、尻に入っている物を抜いて欲しい、と？」 「はい⋯⋯。お客さんに抜いてもらえと、ご主人様が」 「ご主人様⋯⋯？」 「ここのお店の方⋯⋯みたいで、そう呼べと言われたので」 そうやって上下関係をはっきりとさせ、支配しているのか。 場所が場所だからありえなくもないが、あまりにも常識が外れている。