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31.
隣接する大学病院にある温室に雅を呼び出した。
「あんたがこんな所に呼び出すだなんて、ロマンチックと言うべきかしら。それとも、癒されに来たのかしら?」
「⋯⋯癒されに来るのなら、わざわざお前なんか呼ばない」
「冗談っていうものを知らないのね。落ちぶれ御曹司は」
「⋯⋯っ」
減らず口め。
指が食い込むほど握りしめた。が、深呼吸した。
「で、いちいちあたしを呼んだってことは、目標の既成事実が作れたってこと?」
「そんなわけがない。あれと会ってから1ヶ月程度だ。そんな容易く出来るわけがない」
「1ヶ月だろうかなんだろうが、さっさと終わらせるべきことだと思うのだけど? あんたの所、ものすごく悪化しているみたいじゃない」
「そうだが、そんな容易にやってはいくらあのような相手とはいえ、信用してもらえないだろう」
「あんなの、人間として扱っているのね」
「⋯⋯なに⋯⋯?」
目を鋭くする。すると、雅は長い腕を組むと顎を上げ、まるで上から見ているような視線を向けた。
「あんな所で働くことしか出来ない低俗な性なのよ。同じ人間だと思いたくないわ」
「ただ特殊な体質があるぐらいで、オメガも同じ人間だろう。あのような所で働かされているのは、自分らの方が上だと勘違いしている奴らのせいだ」
あの娼年の言葉にするのも躊躇う悲痛な声は、悠々自適に過ごしてきた俊我に残酷な現実を突きつけた。
いくら風俗とはいえども、本人の同意もなく、しかも、精通もなかった未成年を無理やり働かせる、そんな人権を無視した非合法なやり方だ。赦されていいはずがない。
「あんた、なんだか肩入れしているような言い方ね。惚れた人間 でもいるの?」
惚れるだなんて、そんな。
ところが、雅にそう言われて否定出来ない自分がいた。
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