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隣接する大学病院にある温室に雅を呼び出した。 「あんたがこんな所に呼び出すだなんて、ロマンチックと言うべきかしら。それとも、癒されに来たのかしら?」 「⋯⋯癒されに来るのなら、わざわざお前なんか呼ばない」 「冗談っていうものを知らないのね。落ちぶれ御曹司は」 「⋯⋯っ」 減らず口め。 指が食い込むほど握りしめた。が、深呼吸した。 「で、いちいちあたしを呼んだってことは、目標の既成事実が作れたってこと?」 「そんなわけがない。あれと会ってから1ヶ月程度だ。そんな容易く出来るわけがない」 「1ヶ月だろうかなんだろうが、さっさと終わらせるべきことだと思うのだけど? あんたの所、ものすごく悪化しているみたいじゃない」 「そうだが、そんな容易にやってはいくらあのような相手とはいえ、信用してもらえないだろう」 「あんなの、人間として扱っているのね」 「⋯⋯なに⋯⋯?」 目を鋭くする。すると、雅は長い腕を組むと顎を上げ、まるで上から見ているような視線を向けた。 「あんな所で働くことしか出来ない低俗な性なのよ。同じ人間だと思いたくないわ」 「ただ特殊な体質があるぐらいで、オメガも同じ人間だろう。あのような所で働かされているのは、自分らの方が上だと勘違いしている奴らのせいだ」 あの娼年の言葉にするのも躊躇う悲痛な声は、悠々自適に過ごしてきた俊我に残酷な現実を突きつけた。 いくら風俗とはいえども、本人の同意もなく、しかも、精通もなかった未成年を無理やり働かせる、そんな人権を無視した非合法なやり方だ。赦されていいはずがない。 「あんた、なんだか肩入れしているような言い方ね。惚れた人間(オメガ)でもいるの?」 惚れるだなんて、そんな。 ところが、雅にそう言われて否定出来ない自分がいた。

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