日を改めて店を訪れた時、"あいが"は他の客の相手をしているようだった。 その客が延長をしなければ、そろそろ終わるらしいが、はっきりと分からなかった。 だが。 ポケットに入れた物を弄る。 今日は"あいが"に会いたいからいくらでも待とう。 俊我は番号札を受け取り、待合室に向かった。 思ったほど待たずに順番となり、その足で"あいが"のいる部屋へと赴いた。 「俊我さん、こんばんは」 入ってくるなり、ベッドに座っていた"あいが"はそう迎えた。 その際につい目線がいってしまったのが、初めて会った頃よりは多少肉が付き、けれども細い両手を戒めていた枷。 今は外されていたが、赤く痕になっており、生々しく痛々しい。 さっきの相手が例の客だったのか。 「枷、取り外してもらえたんだな」 「ええ、はい。先ほど外してもらえました。ちゃんと言うことを聞けたと言って、頭を撫でてくれたり、こないだの俊我さんのように優しく抱きしめてくれました」 小さく笑うその横顔に、怒りの炎をチラつかせた。 「ですが、俊我さんのように嬉しいとは思いませんでした。どうしてなのでしょう」 "あいが"は不思議そうに首を傾げていた。 火が小さくなった。 冷静になってくると、"あいが"がそう言っているだけで事実じゃない可能性もある。俊我を惑わせようとしているのかもしれない。 そう思わないと、もっと手放せなくなる。 「⋯⋯そうか」 適当に返事をして、隣に座ると片手を取った。 突然されたことにビクッとした"あいが"のことを気にせず、ポケットから取り出した薬でこないだから気になっていた打撲痕から塗った。 「え、えっ⋯⋯と、それは？」 「痕を治す薬だ。冷却剤も使った方がいいが、すぐに会えるか分からないから持ってこれなかった」 「そんな、そこまでしてくださらなくても。いつも放っておけば治ってますし」 「俺のようにそんな痛々しいのを見るのが嫌な奴もいるだろう。早めに治した方がいい」