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40.
今度こそ"あいが"は困っている顔を見せた。
彼なりに俊我に礼をしようとしているようだった。
しかし、痛みを覚えている彼に無理強いはしたくない。
だとしたら。
「だったら、抱きしめてくれないか」
「えー⋯⋯っと、こないだのようにですか?」
「そうだ。それなら最小限に痛くはないはずだ」
「たしかに、そうですが⋯⋯」
何故か、戸惑っている、ように見えたが、恥ずかしげとも嬉しそうに小さく笑みを作っていた。
こないだ、抱きしめたことがそんなにも嬉しく思ったのか。
「失礼しますね」
丁寧に断りを入れてから、おずおずとした両手で俊我の背中に回した。
小さな身体の温もりを一心に感じた時、変な気を起こしそうになり、同じように手を回しながらも、興奮を抑え込もうとしていた。
「俊我さん、これでいいんですか」
「ああ、充分だ」
「お役に立てて何よりです」
喜びが込み上げているような声を聞き、"あいが"が少しでも思っているようで、嬉しく思ってしまった。そして、同時に罪悪感が募る。
ただ何とも思わなかった頃に戻りたいぐらいに、この娼年の純粋で素直そうに見えるさまに、呑まれそうになっている。
少しずつ自分に心を開いているのが分かるのに、開かないでくれとも思ってしまった。
けれども、他の奴らには奪われたくないとも思ってしまう。
そんな矛盾だらけを抱えた自分に、嫌気とも、苦笑がただ漏れる。
一体、何がしたいのだ。
思考がまとまらないままであったが、今は。
ただ抱きしめる行為によって満たされて欲しいと思いながら、純粋無垢な身体を抱きしめ続けるのであった。
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