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今度こそ"あいが"は困っている顔を見せた。 彼なりに俊我に礼をしようとしているようだった。 しかし、痛みを覚えている彼に無理強いはしたくない。 だとしたら。 「だったら、抱きしめてくれないか」 「えー⋯⋯っと、こないだのようにですか?」 「そうだ。それなら最小限に痛くはないはずだ」 「たしかに、そうですが⋯⋯」 何故か、戸惑っている、ように見えたが、恥ずかしげとも嬉しそうに小さく笑みを作っていた。 こないだ、抱きしめたことがそんなにも嬉しく思ったのか。 「失礼しますね」 丁寧に断りを入れてから、おずおずとした両手で俊我の背中に回した。 小さな身体の温もりを一心に感じた時、変な気を起こしそうになり、同じように手を回しながらも、興奮を抑え込もうとしていた。 「俊我さん、これでいいんですか」 「ああ、充分だ」 「お役に立てて何よりです」 喜びが込み上げているような声を聞き、"あいが"が少しでも思っているようで、嬉しく思ってしまった。そして、同時に罪悪感が募る。 ただ何とも思わなかった頃に戻りたいぐらいに、この娼年の純粋で素直そうに見えるさまに、呑まれそうになっている。 少しずつ自分に心を開いているのが分かるのに、開かないでくれとも思ってしまった。 けれども、他の奴らには奪われたくないとも思ってしまう。 そんな矛盾だらけを抱えた自分に、嫌気とも、苦笑がただ漏れる。 一体、何がしたいのだ。 思考がまとまらないままであったが、今は。 ただ抱きしめる行為によって満たされて欲しいと思いながら、純粋無垢な身体を抱きしめ続けるのであった。

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