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そこで、俊我はハッとした。
またオメガという社会的に弱い立場にいる者のことを同情してしまった。
余計なことを考えるな。
「⋯⋯あいが。アザの方は大丈夫か」
「え? あ、はい。俊我さんのおかげで、このように綺麗さっぱり、しかも、早く治りましたよ。他のお客さんに肌が綺麗だねと褒められましたし、おかげさまで毎日忙しいぐらいになりました」
「そうだな。お前はこの店で一番人気なようだ。なかなか簡単には会えなくなったな」
「そうだったのですね。俊我さんに会えないのは寂しいですが、仕方ありませんよね」
苦笑する。
しかし、俊我の目には悲しげに映った。
胸が締め付けられる。
「あ⋯⋯とにかくですねっ、何もかも俊我さんのおかげです! ありがとうございます!」
「ただ薬に詳しいだけだ。そこまで大袈裟に言われるほどでもない」
「お薬に詳しい⋯⋯。ということは、そういったお仕事をなされているということなのですか?」
「⋯⋯ああ、そうだ」
「そうだったんですね! すごいですねぇ」
「そんな大した⋯⋯」
咄嗟に出かかった言葉を無理やり飲み込んだ。
前に嘘で仕事をしているとは言ったことがあったが、最低でもここよりもいい仕事だと分かってしまったら、それは不憫でならない。
「どうしました?」と首を傾げる"あいが"に「なんでもない」とはぐらかした。
「あ、ずっと立ったままでお話してましたね! 僕としたことが⋯⋯」
「そんな気にすることでもない」
「お気遣いありがとうございます。さて、立ち話もなんですから、座ってお話しましょう。俊我さんといっぱいお話したいです」
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