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43.
手を引いて、ベッドに導こうとしていた。
鼓動が脈打つのを感じる。
言わなくては。
「話がある」
「え?」
こちらに振り返り、目を丸くする"あいが"。
一呼吸を置いた俊我は、真剣な顔をした。
「お前は俺と一緒にいる気はないか?」
「えっ、え⋯⋯?」
言っている意味が分からないといった顔を見せる。
無理もない。俊我自身も気持ちが早まりすぎていて、先走った言い方をしてしまったのだから。
「あまりにも急な言い方だった」と言葉を改めた。
「店先で客寄せしているお前を見かけた時、一目惚れをしたんだ。どうにか好きになってもらいたくて、話したり、好きな物が分からないから金しかあげられなかったが、それでもお前は困り笑いで受け取ってくれて。その表情でも、嬉しくてたまらなくて」
この口から発せられる言葉は全て嘘だ。
そう、嘘だ。嘘の塊だ。
そうやって自分に言い聞かせて言葉にしないと、違う言葉が漏れ出てしまう。
嘘だと、自分にも騙さないと俺は。
「⋯⋯さっきも俺の姿を見た時、飛びついたのが⋯⋯って、何笑ってるんだ」
「だって⋯⋯だって、こんなにも僕のことを好きだと思わなくて。嬉しくて⋯⋯」
胸いっぱいだと言わんばかりに、鈴を転がすように笑った。
あまりにも澄んだ心を持っている。
俊我以外にも愛の告白でもした輩がいただろうに、それでもこんなにも初めてもらったとばかりに、嬉しくてたまらないと笑うのだ。
勘違いしてしまいそうだ。
ひとしきり笑った"あいが"は頬を緩めたまま、こう言った。
「僕も俊我さんの笑った顔が好きです。俊我さんと一緒にいたいです」
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