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「そう、ですよね······えへへ······。えと、その、食後の楽しみにしたいので、今は俊我さんの作る料理を待ってますね」 照れ笑いをしながらキッチンを去ると、ソファに置いてあったクッションを膝ごと抱えて、落ち着かなさそうにしていた。 膝を抱えるのが癖なのだろうか。そんな姿さえも愛おしく感じて、ずっと見ていたくなったが、正気を取り戻し、さっさと作り上げた。 「出来たぞ」 テーブルに出来上がった料理を置きながら、うたた寝している"あいが"に声を掛けると、「えっ、あ、はい!」と飛び上がった。 その様子がおかしくて、さすがに笑えてきて、しかし、笑っているのを悟られないよう顔を背けた。 「俊我さん、笑ってます?」 「······いや、笑ってなど······っ」 「声が震えてますね! 笑ってます! 恥ずかしいですから、笑わないでください!」 「笑ってない。それよりも腹を空かせているんだろう。食べろ」 必死に堪えながらもそう促すと、納得してなさそうな"あいが"であったが、「分かりました」と素直に従い、席に着いた。 その後に続いて俊我も席に着いた後、手を合わせた。 その様子に不思議そうな顔をした"あいが"と目が合ったが、慌てたように俊我に倣って、手を合わせた。 「いただきます」 「い、いただきます」 ほぼ同時に先割れスプーンを持ち、作った料理に手を付けた。 「あっ、つ······っ」 短い悲鳴が聞こえ、急いで顔を上げると、口元を抑えている"あいが"がいた。 「どうした、大丈夫か」 「大丈夫です······思っていたよりも熱かったので、びっくりしてしまいまして······」 苦笑いをする"あいが"に、猫舌なのかとふと思った。 「気をつけろよ。冷ましながら食べな」 「はい······」 掬った具をフーフーをし、恐る恐るといったように口に運んだ。 直後、破顔した。

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