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俊我の想像を絶する、永遠とも言える惨たらしいことをされ続けてきたあのような所を少しでも思い出したくないはずだ。それなのに、連想させてしまうそのような格好をしないと落ち着かないという。 「"あいが"がそれを着て落ち着くというのなら買ってきてやるが、いかんせん詳しくなくてな。好みとかあるのか?」 「僕もこだわりというのはありません。ただ、あそこで着ていたような物であれば、なんでも構いません」 なんでもか······。 それはそれで困る。 "あいが"の好み以前に女性物の下着ということは、そのような店に赴かなければならない。男一人がそのような所に行くのはかなり壁が高い。 ふと、雅のことが頭に過ぎった。だが、目的の一歩のためとはいえ、あの女に頼むのは自ら命を絶つ方が遥かにいいと思ってしまうほど頼みたくない。 と、そこで俊我は閃いた。 枕横に置いていた携帯端末を手に取った。 検索アプリで調べてみると、"あいが"が着ていたような下着が出てきた。 「"あいが"。この中にお前が着ていたようなやつがあるか?」 携帯端末を渡して、恐る恐るといった手つきでスクロールしていると、「これが似てますね」と見せてくる。 それを目に映した時、眉間に皺が寄った。 検索して最初に見たような形状の黒色のベビードールであったが、さっきと違うのは、ちょうど胸部分が開く仕様となっているらしく、画像のモデルが強調するように指で開いて目線を向けている姿だった。 色々の問題で修正されているが、きっと完璧に見えてしまうはずだ。 さきほど見えてしまった胸の突起物が。 「······あの時は薄暗くて見づらかったが、本当にこういうものだったのか?」 「ええ、そうですね。というより、こういうものしか着たことがありませんでした。胸部分が開かない下着もあるのですね」 「この機会に着たことがないタイプにしてみたらどうだ?」 「そう、ですね······。でしたら、いっそのこと俊我さんに選んでもらいたいです」

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