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66.
あの時は雰囲気に飲まれているだけだと思っていたが、気持ちが変わり、何やっても愛おしく感じている今、正気でいられるのか。
「······俊我さん。起きていますか?」
悶々と考えている中、控えめな声が聞こえてきた。
「ああ、起きているが」
「あの、申し訳ないのですが、もう少しお付き合い頂ければと思います。その······興奮して寝れなくて······」
見知らぬ部屋で俊我と寝ることは初めてだ。落ち着かなくて寝れないのだろう。
"あいが"の方へ向き直った。
「分かった。お前が寝るまで付き合ってやる」
「······ありがとうございます」
安心したような笑みを見せた。
さて、このまま見つめ合っていてもさらに心の余裕がなくなって寝れなくなる。
けれども、これといった話題が見つからない。
どうしようか。
「俊我さん」
「なんだ」
「ずっと思っていたことなのですが、僕の名前と俊我さんの名前って似ているなと思いまして」
「名前······?」
俊我と"あいが"。
似ている点としては、最後の「が」の部分だろう。
それを言ってみると、「そうです」と目をきらきらとさせた。
「俊我さんが名前を名乗った時からそう思っておりました。ですが、あの時はただ偶然だと思うだけで深くは思いませんでした。こうして一緒になって、お互いの名前を呼んだ時、改めてそうと思いまして。そう思いますと、好きな人との共通点があることって素敵なことですね」
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