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68.
「⋯⋯『愛賀』」
やはり、あの字だ。
そういう意味で呟く俊我に、愛賀は続けた。
「愛、なんて今思うとあからさまですよね。場合によってはその名前さえ呪いの言葉のように聞こえて不快に思ってました。ですが、俊我さんに呼ばれる度に心が温かくなるんです。好きであるからそんな気持ちになるのでしょうけれども、もっともっと呼ばれたいと思うようになりました」
俊我の携帯端末ごと胸にそっと添え、喜び溢れる顔を見せる愛賀に愛おしさが最高潮に達した。
愛を表す言葉を思いつく限り全て言いたい。艶やかな黒髪に、赤く染まる頬に、色鮮やかな柔らかい唇に心ゆくまで触れたい。
そして、自制のためにと嵌めたままの首輪を外し、首に自分のものだと印を付けてしまいたい。
もう、抑えきれない。
「俊我、さん?」
腕の中で驚きの声を上げる。
構わず俊我は、その温もりを逃さないとさらに包み込む。
「⋯⋯あの時も急に抱きしめてくれましたよね。今と同じでびっくりしましたが、やっぱりただ抱きしめられるのはとてもいいですね。温かくて、気持ちいいです」
俊我の胸に擦り寄せた。
ああ、何故こんなにも心を許してしまっているのか。
「愛賀、す⋯⋯」
「はい?」
「⋯⋯少し、寒くないか?」
「ふふ、俊我さんのおかげで寒くはありませんよ」
「そうか」
「はい」
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