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71.
「⋯⋯お前、その格好で洗濯物を取り込むなよ」
「そんなことはしませんよ」
「しそうだから言ってるんだ」
つい強い口調で言ってしまう。
それもそのはず、ベビードールという下着姿でいたからだ。
本来であれば、服の下に身に付けるような物を普段着のように着ていたのだ。
始めの頃はパジャマのように着ていた物を──それですら刺激が強かったが──、いつの間にか普段でも着るようになっていたのだ。
「俊我さんが買ってきてくださった洋服にも申し訳ないのですが、やはり、この格好でないと落ち着かなくて」と付け加えて。
百歩譲って、寝る時は仕方ないとどうにか耐えたが、こうも日常でもその格好でうろつかれると、気が休まらない。
格好についても、改めるべきだと口酸っぱく言っている。
「朝晩も暖かくなってきたとはいえ、いくらなんでもその格好は寒いだろう。今すぐにでも着ろ」
「部屋がちょうどいい温度なので、意外と寒くないのですよ。それも何度も聞きました」
日常的に言っているものだから、さすがに鬱陶しく感じているようだ。うんざりとした顔を見せ始めた。
人間らしく、珍しい顔をするものだな。そんな顔でさえ、かわ⋯⋯いや、そんなこと微塵も思ってない。断じて。
「ともかく、人がせっかく買ってきた服をちゃんと着ておけよ。もし、俺が帰ってきた時もそんな格好でいたら⋯⋯」
「いたら?」
何故か、期待している眼差しを向けてきた。
意味が分からないと、その輝かせている瞳から目を背け、呻くように言った。
「⋯⋯無理やり着せるからな」
「えぇー⋯⋯それは微妙に嫌です。困ります」
「だったら、着ておけ」
「うぅ⋯⋯俊我さんがそう言うなら⋯⋯」
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