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「さぁな。いくら家のことといえども、学生である俺は内部まで詳しく知らない。⋯⋯とはいえもう、学生であることも辞めたけどな」
自嘲していると、「はぁ? どういうこと?」と言う声が上がった。
「俊我、お前大学を辞めたということか?」
「そうだが」
「そうだがって、お前⋯⋯なにもそこまでしなくていいんじゃないの。会社がそうなっても、何かしら役に立つんじゃねーの。ほら、高卒と大卒で給料が違うって言うしさ」
ほぼ同じようなことを言う。
俊我は頭を抱える彼に鼻で嗤っていた。
愛賀を引き取った頃に親に大学を辞めることを告げた。
普段の生活でもまともな判断ができない父に言うとややこしくなるため、母にしか言ってないが、目の前の友人と同じようなことを言った後、
「あなたがそう決めたのなら、これ以上とやかく言いません。けど⋯⋯お父さんとあなたを支えられなくてごめんなさい」
そう声を震わせていた。
何も母が悪いわけではない。
悪いのは、不祥事を起こさせた外部の人間なのだから。
そのまま家に残っていてもいいと言う母の制止を聞かず、出て行った。
それからというもの、あれ以来実家には帰っていない。
「⋯⋯家庭の事情は様々だ。給料に差があるといえども、大学に行くことさえ難しいこともある。今の俺には最善の判断だと思っている」
「⋯⋯っ」
何か言いたげに口を開いたが、苛立ちげに唇を噛み締めていた。
「⋯⋯で、大学を辞めてからお前は何しているんだ?」
「ひとまずは投資をしている。⋯⋯とはいえども、成果は芳しくはないが」
「そうか⋯⋯。俺、そういうのよく分からないから、アドバイスとか出来ねーけど、無理なく頑張れよ」
「ああ」
沈黙の空気が流れ、気まずそうにしている彼が注文した飲み物を飲んでは置いて、飲んでは置いてを繰り返していた後、手持ち無沙汰となっていた彼は携帯端末を何気なく眺めていると、「あっ」と声を上げた。
「俺、そろそろ面接しに行く時間だわ!」
「そうか」
「久しぶりに会えて良かったわ! ⋯⋯あと、何か困ったことがあったら、俺でもいいから相談してくれよな?」
「⋯⋯ああ」
「じゃあ、行ってくる!」
テーブルに飲み物代を置いた彼が慌ただしく去っていくのを、俊我は姿が見えなくなるまで見続けていた。
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