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83.

ふと、目を開けた。 全身が、特に腰が僅かにでも動かそうとすると響くような痛みが走った。 こんなにも痛むようなことをしただろうか。 まだすぐに開けない視界の中、ぼんやりとした頭で記憶を辿るよりも先に残り香を嗅いだことにより、記憶が喚び起こされる。 昨日、帰ってきた時、発情期(ヒート)になってしまった愛賀のフェロモンに充てられて、アルファの浅ましい本能を剥き出しにしてしまい、愛賀に剥き出しの欲をぶつけてしまったのだ。 何度も何度も精を吐き出し、限界を感じた俊我だったが、愛賀が自ら腰を振っては俊我の精を絞り出そうとするものだから、止めようにも止められなかった。 それから愛賀のフェロモンが収まってきた頃、ようやく正気を取り戻してきた俊我は愛賀のことを心配して、「さすがに疲れただろう」と身体から離そうとした。 ところが、愛賀は「やだッ!」と激しく身体を揺すった。 『どうして⋯⋯あいがのこと魅力的だってようやく分かってくれたんじゃないの⋯⋯もっと射精()してもいいんだよ⋯⋯? あいがは、しゅんがさんのせーえき、欲しいよ⋯⋯。射精()してくれればくれるほど、あいがは愛されているって、思うから。あいがって、呼んで。孕ませて⋯⋯』 俊我の上に乗る愛賀は、さらに幼く、ワガママを言いたい子どものようであった。 そして、悦びに浸る妖艶な娼年のように振る舞っていた時とは違う雫を流していた。 その姿に慰めるための手を伸ばすことなく、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。 何故、そのようなことを出来なかったのか。そのぐらいことやれば良かったのに。 今の自分が過去の自分に非難した。 ついでのように思い出されたそのことは、きっと後悔があるからだろう。けれども、いつまでも引きずっているわけにもいかない。

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