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86.
急いで布団で隠されていた背中辺りを引き下ろした。
すると、予想に反して綺麗なままだった。
ベビードールで隠された箇所にでも噛んだのかと思ったが、そうではなさそうだった。
「しゅ、んがさん⋯⋯?」
愛賀の戸惑う声が聞こえたことにより、ハッと我に返った俊我は「なんでもない」と言って、手当てし始めた。
「手当てしてもらうの、あの時以来ですね。こうしてまた俊我さんに手当てしてもらう日が来るなんて⋯⋯えへへ」
「今回は俺の制御が利かなかったせいだ。⋯⋯あの時、お前を傷つけないと言ったのに」
傷つけた箇所に顔を寄せる。
愛賀のことが好きで、いつまでも抱きしめていたいぐらい愛して止まなくて、けれども、その言葉を口にすることは本当に離れたくなくなってしまうから、だから普段言えない感情を剥き出しにしてしまった。
憎たらしい性 だ。
「⋯⋯俊我さんは悪くないですよ」
静かな声が聞こえ、息を呑んだ。
「そうさせてしまうのは、僕の自分で抑えることが出来ないオメガのせいなのですから」
「違う」
「俊我さんは僕のような浅ましいオメガにも寄り添ってくれました。ですが、やはりそう思ってしまうのです」
悲痛そうに聞こえたその言葉に、下唇を噛んだ。
触れることで慰める機会が無くなっても、今は言葉で慰める機会であるのに、この時に限っていい言葉が見つからない。
痛いぐらいに唇を噛む俊我に、「ですが」という声が聞こえた。
「こうとも考えられます。噛んでしまうほど僕のこと魅力的だと好きだと思っているのかなと⋯⋯。俊我さんの口からそのような言葉を聞いたことがなかったので、本当に僕のこと好きなのかなって、不安に感じていましたので⋯⋯」
恥じらい、だが、どこか不安な声で言った。
こんな一途に愛そうとする者を利用しようとしている奴が嘘でも言ってはならない。
俊我の本心は愛賀には分からないはずだが、さすがに愛の言葉を口にしなかったことに関しては気づかれてしまったようだ。
けれども、言えない。
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