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87.
「⋯⋯いえ、こんなのただの自惚れですよね。なんでもありません。今言ったことは──」
「自惚れじゃない」
顔を上げると、振り返っていた愛賀と目が合う。
発情期 の時か、はたまた俊我がいない時に泣いていたのか、目元がうっすらと赤く腫れていた。
「そのようなことを思ってもいいんだ。俺は口下手だから、伝えているつもりでも伝えていなかったんだな。⋯⋯それ以前に、お前のことが魅力的だと思わなかったら、お前と一緒にいようとは思わない。だから、その程度のことを思っていても悪いことではない」
この言葉は残酷だなと俊我は思った。
この言葉さえも一時の気休めにしかならないのだから。
愛賀にとっても、自分にとっても。
「俊我さんがそこまで想ってくださっているのなら、いっそのこと僕とこ⋯⋯」
「こ?」
「あぁ、いえ! ただ血迷ったことを言おうとしただけです! 忘れてください!」
顔を真っ赤にして、目の前で全力で両手を振っていた。
可愛い。いつもの調子に戻ってきたようだ。可愛い。
「そうか」と返事をしつつ、何故そのような顔になったのかは分からないが眺めていると、頬を染めたまま改まった顔をした。
「俊我さん。⋯⋯抱きしめてもいいですか?」
「え」
「いえ、嫌でしたら別にいいのです! ただ言ってみたかっただけ⋯⋯と言いますか⋯⋯」
「⋯⋯いや、嫌ではないが。いきなりどうした」
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