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88.
愛賀からそのようなことを言うのは初めてであった。
だから、その不意打ちに心の準備も出来ていなかったし、愛賀からではなく、衝動的にこちらから抱きしめてしまいそうになるのを堪える。
そんな俊我の葛藤を露知らず、モジモジさせていた愛賀であったが、おずおずと言った。
「今、急に俊我さんの温かさを感じたくなりまして。一応許可をと思いまして⋯⋯」
「前にも言ったが、そのぐらいなこといちいち許可を取らなくていい」
ほら、と両手を広げると「では、失礼します」と控えめに俊我の腕の中に収まった。
「ふふ、やっぱり俊我さんに抱きしめられるのは好きです。とても安心します」
「俺が抱きしめる側になっているな」
「へへ、自分で言っておいてなんですが、この形が自然とさまになっているのですよ。今度こそは僕から抱きしめてあげます」
「⋯⋯期待はしてない」
「えー、ちょっとは期待してください」
むぅとむくれてみせるが、すぐに満面な笑みを見せてくれた。
可愛い。好き。
つい出そうになったのを堪え、ただ見たかった笑顔を眩しそうな目で見つめていた。
この笑顔を見られるのはあと何回なのだろう。
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