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「どうですか? 美味しく作れたと思うんですけど⋯⋯」
「⋯⋯まぁ、前よりもいいかもしれないな」
「そうですか! 嬉しいです!」
まだ味が均等ではないものの、初めて作った時に比べれれば、食べれなくない味になっている。とはいえ、愛賀が作った物であれば、たとえ、見た目がそういう料理を作ったと言われなければ分からない料理だとしても美味しく頂ける。というより喜んで頂きたい。
⋯⋯と言えるはずがなく、素っ気ない態度を取っているが、口走ってしまった以来、それが照れ隠しだと思われてしまっているようで、いい意味で捉えているようだ。
愛賀がそれで満足しているのなら、今はそれでいい。
向かいの席で喜びが溢れんばかりに笑顔で食事している愛賀に質問を投げかけた。
「愛賀。前々から気になっていたが、出かける時と帰ってきた時にキス以外に抱きしめてくるのは何故だ? そんなにも家にいて欲しいのなら、いてやらないこともないが」
「そんな僕のワガママで俊我さんがそのようなことをして頂かなくても大丈夫です。⋯⋯あの時、僕から抱きしめなかったので約束としてです」
愛賀が発情期 し、番になれない悔しさから首輪下を始め、その周辺に噛み跡を付けてしまい、手当てした後、急に愛賀が抱きしめたいと言った時のことを言っているのだろう。
あんなの、ちょっとした戯れのつもりで聞いていたが、律儀なものだ。
とはいえども、毎日のようにしてくるのはし過ぎなのではと思ったりするが、俊我も愛賀の温もりを感じていたいため、黙っていた。
「⋯⋯じゃあ、俺が家にいる間、結構触ってくるよな。それは何なんだ」
「それは⋯⋯特に深い意味はありませんよ。ただ、俊我さんに触れ──ぅっ」
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