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「謝ることではない。俺も愛賀に無理をさせていたことに気づけずにいた。謝るのは俺の方だ」 「口の中が気持ち悪いだろう。洗面所に行くぞ」と介抱し、洗面所に向かう。 口をゆすぐ愛賀の後ろで携帯端末を取り出した俊我は、ある電話番号を画面に出した。 「愛賀。今から病院に行こうと思っているのだが、行けそうか?」 ゆすぎ終わり、口元をタオルで拭いている愛賀に訊く。 その問いは、この部屋に住んでから一度も外に出たことがなく、そんな人間が急に外を出るのが怖いと思ったからだ。 俊我としては、そんなことを言ってられなく、一刻も早く診療させたいと思っていた。 「⋯⋯このぐらいのことで大げさですよ。急なことでびっくりしちゃいましたが、喉まで突っ込まれた時に吐いちゃったことが──」 「それとこれとは別だ」 細い肩を掴み、苦笑していた愛賀を真っ直ぐに見た。 途端、驚きで見開いた目で見返してくる。 「故意に吐かされたのとは違って、今は何かしらの病気の可能性もある。俺が買ってきた物の中に食中毒となった原因の可能性もなくはない。だから、一緒にすることではないし、第一にお前は自分のことを下に見すぎだ。もう少し自分を労わってくれ」 あまりにも自分のことを大切にしない愛賀に、強めの口調で言ってしまった。 そのせいで、何か言いたげに口を開こうとしていたが躊躇している様子だった。 そんな愛賀にハッとし、されど、愛賀に促すことはなく、こう言った。 「⋯⋯病院に行くぞ」

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