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「次の検診までに何かありましたら、遠慮なく来てくださいね」 その言葉を背に受けて、愛賀と共に帰路に着いた。 開かれたままのトイレのドアを横切り、テーブルの上には食べかけの食事が置いてあり、しかし、それらも目にくれず、ほぼ同時にソファに座った。 「⋯⋯」 言葉を忘れたのかというぐらい、互いに何も話さずにいた。 「あの、俊我さん。まだ分からないことがあるのですが」 しばらくとも言える時間の後、ぽつりと愛賀が言った。 「なんだ」 「僕のお腹に赤ちゃんがいるのでしょうか」 「そういうことになる」 「俊我さんとの赤ちゃんが⋯⋯」 「⋯⋯そうだ」 「まだ、実感がないですね」 膨らんでもいない腹部を触っていた。 そんな手に、ぽたと落ちるのが目に映った。 思わず顔を見ると、瞳を濡らしていた。 「オメガになってしまって、悪いことばかりでした⋯⋯。そんな僕が好きな人との子どもができるなんて、夢にも思いませんでした。今こんなにも幸せに感じるなんて、本当に俊我さんと出会えて良かったです」 潤ませ、しかし、今までに見た中で幸せそうな顔を見せてくる。 胸が刺されたかのように、ズキリと痛む。 皮肉にも既成事実というきっかけがなければ、愛賀には会えなかった。 そんなことじゃなければ、俊我も一緒になって笑えたのに。 誤魔化すために愛賀の後頭部辺りに手を回すと自身に引き寄せた。 「⋯⋯俺もそう思う」 顔を隠してしまった愛賀からすすり泣くような声が聞こえた。 今は幸せに流すこの涙も、いつしか俊我を嫌いになるぐらい悲しみの涙を流すのだろう。 何故、出会ってしまったのだろう。

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