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108.
妻と呼んだオメガの男性と見つめ、微笑み合っていると、リポーターが「素敵なカップルですね」と言っていた。
「あ、この人首輪してないんだ。ってことは、ちゃんと噛んでもらえたんだ。いいなぁ⋯⋯」
テレビの方に顔を向けていたらしい愛賀が、そんな呟きをし、それからこちらを見つめる気配を感じた。
しかも、じっとだ。
目ざとく見つけてしまったことを気づかないままにして、チャンネルを変えようとリモコンを取ろうと手を伸ばそうとした時、その手を取られた。
思わずその手先を見やると両手で添え、首輪に触れられた。
「ねぇ、俊我さん。もういいでしょう? この首輪を外して。今度はうなじに噛んで」
小首を傾げて、期待した目で見つめてくる。
どきり、と胸が高鳴ったが、平静を保った。
「その首輪は簡単には外れない。お前が検診以外に外に行かなければ、噛む必要はないだろう」
「そうじゃなくて、僕は俊我さんと番だって痕を付けて欲しいの! こんな俊我さんが選んでもない、無理やり付けられた首輪なんてずっと付けていたくないよ」
「俺は一度、うなじ以外にそれも強く噛んで、愛賀をものすごく痛い思いをさせてしまった。だから、あまりする気にはならない」
それは本心でもあった。
あんなにも痛がっている愛賀を二度も見たくなかった。
「⋯⋯そう、だけど⋯⋯。でも、僕は俊我さんのだって証拠が欲しいんだ」
「子どもだっていい証拠だ。俺と愛した結果なのだから」
「それもそうだけど⋯⋯っ! 僕の身体にも刻んで欲しいの!」
わからず屋と言わんばかりに俊我の手をぎゅっと掴んできたが、両手でされても戯れ程度で痛いとは思わなかった。
それにしても、何をそんなに怒っているのだろう。またつわりのせいで輪をかけて怒っているのかもしれないが、窘めなければ身体に毒だ。
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