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109.※ディープキス
「愛賀、そんなにも怒っているとお腹の子どもに影響が出てしまうだろ」
「怒ってないもん! 俊我さんが僕に痕を付けないから言っているだけだもん!」
言っていることがめちゃくちゃだ。
愛賀の目の前でため息を吐いた。
それに対しても文句を言っていたが、いちいち構っていても仕方ないと無視をした。
口で窘めてもダメならば。
「ねぇ、俊我さん! 聞いて──むぅ⋯⋯っ」
黙らない口を塞ぎ、突然のことに驚いていたのも束の間、塞がれてもなお、顔を背け、文句を言おうとする愛賀の後頭部を抱え込むように手を添え、そのままぐっと引き寄せるとわざと音を立てて、言葉を封じた。
開いていた口に舌を入れ、行き場を失っていた愛賀の舌を激しく絡ませた。
「は⋯⋯っ、⋯⋯ぁ⋯⋯ふぁ、んぅ⋯⋯っ」
気持ちいいと思っているのだろう、すぐにとろけた顔をし、掴んでいた手の力が弱まった。
解けた片手の親指を触れるか触れまいか程度で撫で、絡めていた愛賀の舌をきつく吸い上げた。
「んん⋯⋯ッ! ん⋯⋯ぅ⋯っ!」
呻き声を上げ、ビクビクと痙攣させた。
身体を震わせる愛賀から離れると、淫らな行為をした後だと窺える銀の糸が垂れた。
「は⋯⋯は⋯⋯ぁ⋯⋯しゅ⋯⋯が⋯さ⋯⋯」
何か言いたげにこちらを見つめてくるが、乱れた息に上気した頬、誘うようなとろんとした目を向けてくる。
そんな顔をされてはまた文句で口を開いても説得力が欠けるし、何よりも黙らせるつもりでした口以上のことをしてしまいそうだ。
そんな元も子もないことを。
「⋯⋯身重のお前にこんなことをするつもりはなかったが、お前が何しても黙らないから、無理やり黙らせた」
「⋯⋯ごめ、⋯⋯なさい」
「分かればいい」
しゅんとする愛賀から目を逸らす。
いつまでも一緒にいたら、変な気を起こしそうだ。
一人になったら、ひとまず昂りを沈めたいと立ち上がろうとしたが、添えられたままの手がまた掴んできた。
見下ろすと、少し眉を下げた愛賀がいた。
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