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「この子の名前をそろそろ考えようと思っていたんだけど、なかなかいいのが思いつかなくて⋯⋯。俊我さんにも考えてもらおうと思って、一応、何となく思いついたのを書き出したんだけど⋯⋯」 そう言って、メモアプリで打ったらしい名前候補の画面を見せてきた。 お腹の子の性別は男だと言われた。だから、愛賀が打った名前候補欄は一目見ただけで、男だと分かるものが多かった。 愛賀が一生懸命考えたというのもあって、どれもこれも良く思えた。 と、見ていくうちにある共通点に気づいた。 「最後に『が』と付くものが多い気がするな⋯⋯」 独り言のように呟いただけだった。 ところが愛賀は「え、そうだった!?」と素っ頓狂な声を上げて自身の方へ画面を向けた。 「本当だ⋯⋯。無意識にそういう名前ばかり考えていただなんて⋯⋯」 目を丸くし、しかし、ほんのりと頬を染めた。 「俊我さんと住み始めた頃、俊我さんの名前と似たような名前だって話を自分からしたけど、子どもにまで付けてしまうほど嬉しく思っていたなんて⋯⋯」 その頬を今度は緩めていた。 胸が痛い。 そこまで嬉しく思わせてしまったのなら、本当の名前を名乗らなければ良かった。迂闊だった。 こうなるとは誰が予想できただろうか。 「⋯⋯そうか。なら、愛賀が考えた名前の中から選ぶか」 「えっ、え、そんな、僕が考えた名前でいいの? 大した名前考えてないけど⋯⋯」 「お前は俺よりもその子どもを大事に想って、一生懸命考えたんだろう? なら、愛賀が選んだ名前の中から決めるのは妥当だ」 「⋯⋯」 正面から愛賀のことを見つめる。と、彼から目線を外し、視線を落ち着かなさそうに動かし、そのまま目線を下げていた。 「⋯⋯俊我さんがそういうなら⋯⋯」 ぽつりと呟いた愛賀は、「だったら、一緒に決めてくれませんか」と改まった口調で言う。 俊我には選ぶ権利は本当はない。 しかし、そんなことを言えるわけがなく、再び見せてきた画面を覗き、そのまま一緒に選ぶ形となった。 隣でこういった理由でこの名前が良かったと一つ一つ言うのを上の空で聞いていた。 俺にはそんな選ぶ権利はない。

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