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118.
その後、何事もなかったかのように時間まで仕事をした。
目が合った桃瀬は訝しんでいたが、特に訊くことはなく、さっきまでしていたことをし、その日の仕事は終わった。
その足で家に着いた。
玄関を開けても、「おかえりなさい!」と満面の笑みを浮かべて抱きついてくるオメガの姿はなく、暗い廊下を過ぎ、同じく暗いリビングの中、ソファにうなだれるように座った。
当たり前のように家で待っていた愛したかった相手の姿が見当たらない。今頃一人で、出産に臨んでいることだろう。
無事に出産しないでくれ。
しかし、その思いは虚しく消え去った。
ぼんやりと天井を見つめていた俊我の携帯端末が短く震え、ゆっくりとした動作で送られてきたメッセージを見た。
予定日よりも早く、難産だったけど、無事に男の子を出産したというメッセージ。
それと共に、看護師が撮ってくれたのだろう、ベッドに愛賀と産まれたての男の子が並んだ写真が添付されていた。
画面が割れたせいでちゃんと見れはしないが、愛賀の目元が薄らと腫れているように見えた。
子どもが産まれることを誰よりも強く望んでいたから、きっと無事に産まれた時、嬉しくて泣いたのだろう。
寂しく、どうすればいいのかと不安でたまらない愛賀の手を握ってあげて、痛みを堪えながらも産んで、その瞬間を一緒に嬉しいと分かち合いたかった。
「頑張ったな」と優しく抱きしめたかった。
このどうしようもない溢れる気持ちをどう発散すればいいんだ。
どうしたら、愛賀のことをただの既成事実を作るためだけの、利用されるただの対象だと思っていた頃に戻れるだろうか。
どうしたら。
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