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120.
「俊我さん、おかえなさ──」
「愛賀。お前のことが必要なくなった」
言葉を遮ってまで言った残酷な言葉。
急にそんなことを言ってくる俊我に、意味が分からないといった表情を見せる。
無理もない。口にした自分でさえもどうしてそんなことを言ってしまったのか分からないのだから。
「え? 俊我さん、何を言っているの?」
「お前はここまでだ。子どもをもらっていく」
困惑を極める愛賀の付けられていた忌々しい首輪を外してやった。
あれほど外してとねだられた首輪をいとも簡単に外されて、さらに分からない状況に陥っていた。
その時に初めて首輪の下を見ることとなったが、首を絞められたかのように赤く腫れていた。
その姿が痛々しく、あの頃のように治してやりたいと一瞬思ってしまったが、思い直す。
急に、かつ俊我の都合で自由にされた首は、そのうち誰かのものになるのだろう。しかし、世間知らずで無防備に晒されたうなじをむやみやたらに噛まれて欲しくないと、この時になっても執拗に思ってしまう。
「へ? なんで? 僕が必要ないってどういう⋯⋯──」
青ざめていく愛賀がこの時でもしっかりと抱き込んでいる、穏やかに眠っている赤ん坊に手を伸ばす。
と、すぐに俊我が何をしようとしているのかを察したのか、咄嗟に庇った。
「⋯⋯やめ⋯⋯っ」
泣きそうに、眉を寄せる顔を見てしまったせいで一瞬引っ込めそうになったが、それを振り払うように愛賀から赤ん坊を無理やりにでも引き離そうとした。
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