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「⋯⋯あの性格だと私以外には見せないと思う。独占欲強いし」
アルファらしい特徴であるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
その桃瀬の独り言のような呟きに、気づいてならないことを気づいてしまった。
全てはこの桃瀬と共にいるために、計画を企てていたことに。
華園院として産まれてしまった以上、御月堂家の者と婚姻することで、双方の家の利益に繋がるために本人らの意思なく、代々そうしてきた。
かつての小野河家もそうであったから、それが当たり前の道だと思う。
しかし、世間的には見るのも憚れるオメガとの出会いでそれを覆そうとしている。
御月堂の面汚しと言って、偶然にも経営難の小野河と共犯し、自身の家柄に泥を塗ることも厭わず、実行している。
気づくのが遅かった。いや、二人の関係性にそういう仲ではないかと薄々思っていたが、とはいえどもそこまでするとは思わなかった。
雅に弱みを握らされ、掌で転がされている。
「⋯⋯最悪な女だ」
自らの意思で選んだ好きな相手のために、周りを巻き込んで、それが最善策といえるのか? それが幸せだといえるのか?
破滅的だ。
もし、雅と同じ、自らの意思で選んだ好きな相手がいて、けれども立場上、容易に一緒にいられない状況で、その一緒にいられるためには、誰かを不幸にしてまでやれてしまうものなのか。
それも好きな相手のためならば。
いや、俺は違う。
かつて、父に反感を買うようなことをし、一時期信頼を失ってしまったが、信頼回復のためにそれを行動で示してきた。
きっと、心から愛したい人ができた時も父に認めてもらうために同じようなことをする。
雅のような残酷なことはしない。絶対に。
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