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また上山にも懐いているようで、ホッとしつつも同時に寂しいとも思ったが、それよりも。
「⋯⋯上山。お前が大河にその言葉を教えたのか」
「いえ、そのようなことはできませんとも。この数ヶ月、大河様にあまりよく思われてませんでしたので、教える機会なんて、そんなそんな」
私は何にも教えてませんと言わんばかりに、首をこれでもかと横に振っていた。
今までの上山の言動と比べれば、教えたのだろうと考えなくとも分かる。
主に仕事で外に出なければならない時があり、その俊我がいない時間を狙って吹き込んだのだろう。
あの時、今後の大河の接し方を改めた方がいいとわざわざ言ってきたくせに、自分に懐かない腹いせにそんなことをしてきたのか。
そうだとしたら、公私混同だ。
それとも、俊我を苦しめるように、現実を突きつけるようにとあの女にでも言われたのか。
数年程度、小野河家で仕えていたが、さほど接する機会がなかったため、分からないところが多い。
「大河様が私のような者に『ママ』と呼び慕っているのでしたら、私はママになりきりましょう」
「ままっ!」
「いや、おい、そこまでしなくていいだろう。第一、お前が大河の接し方を改めろと言ったろ」
「大河様の命令とあれば、私はそれに応えなくてはいけない義務がありますので」
真面目くさった、それともこの状況を楽しんでいるようにも見える上山に一言文句を言いたかったが、それが馬鹿らしく思え、「⋯⋯勝手にしろ」とため息混じりに言った。
「では、小野河様はパパになってくださいね」
「俺を巻き込むな」
「ぱーぱ!」
「大河、俺は違うって言っただろう」
そうつい言ってしまいたくなるが、つぶらな瞳を見てしまうと応えてあげてしまいたくなる。
「⋯⋯少しの間だけだからな」
「良かったですね、大河様。小野河様のことをいっぱい『パパ』と呼びましょうね」
「まぁー、ぱぱっ!」
笑みを含んだ顔を向けると、手を叩いて無邪気に笑っていた。
大河が喜んでいるようだし、少しの間であればいいだろう。
そう思いながら、俊我も小さく笑っていた。
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