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「大河様。こないだテレビで観た『ハニワのだいこうしん!』を憶えていらっしゃいますでしょうか」
それは大河が今夢中になって観ている子ども向けアニメだ。
どこからともなくやってきた雲よりも高いハニワが、古墳を目指して行進している、といった内容のものだ。
一体二体どころではない大群のハニワが、地を揺らし、時には建物をなぎ倒してまでタイトル通り大行進している姿は、たまに一緒に観ても理解し難いものだった。
そしてこれもまたよく分からないが、スタート地点は毎回違うようで、こないだのメキシコの時は、つばの広い麦わら帽子にカラフルなポンチョを着て、行進していたことから、その国の民族衣装に扮していたのだろう。
「うん! たいがのすきなやつ!」
「そうですよね。そのアニメグッズを着々と集めるほどに夢中になってますよね。何かに夢中になられるのはとてもいいことです」
微笑ましげに見つめていた上山は、「話が逸れましたね」と咳払いし、
「そのハニワ達に向かおうとした人達がいましたでしょう」
「うん」
たまにその国の有名な建物をなぎ倒したりもすることがあったが、それを良しとしない人間が中にはいて、果敢にも立ち向かおうとしている、あるいは無謀な者らがいた。
「その中に大河様のパパとママがいるのです」
「ほんと!?」
「⋯⋯いや、おい」
大きな瞳を輝かせている大河の横で、思わずその言葉が漏れた。
「お前、そんなう──」
「本当ですよ。大人ですらあのハニワを止めるのが難しいのです。ですから、ご両親の友人である小野河様に預けているのですよ」
「⋯⋯ふぅん⋯⋯?」
分かったような分からないような、大河は首を傾げ、彼なりにどうにか理解しようとしているようなそんな顔をしていた。
そこで俊我は立ち上がった。
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