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「知らないやつが自分達が大切にしているものを壊すことは悪いことだ。だから、大河の親は怒っている。だが、ハニワはハニワで悪いものを代わりにもらったり、人間達をいるべき場所に送っている。その部分を知らないだけでいいこともしている」
大河の親だと言っている人達もハニワ達によってあの世に送られている描写があった気がするが、そもそも「死」という概念をまだ理解できてない年頃であるはずだから、そこまでの細かいことは気にしなくていいだろう。
大人からすれば、かなりの矛盾だと指摘しまいたくなるところだが。
「はにわは、わるくないの?」
「そうだ。悪くない」
「じゃあ、ねぇ、たいがのほんとーのパパとママに、はにわはいいこだって、いうね!」
「そうしてくれ」
一応は理解してくれた大河の話に合わせて頷いた。
小さな両手をぎゅっとしていた大河がそのうち、身体を左右に揺らし始めた。
どことなく何か言いたそうだと気づき、「どうした」と言ってみた。
「あのね、ほんとーのパパとママがたいがをむかえにきてくれるまで、パパのことパパってよんでもいい?」
すなわち、俊我のことをこれからも変わらずに「パパ」と呼ぶということだ。
「それは⋯⋯」
こんな状況でなければ嬉しい呼び方だ。
しかし、俊我にその呼び方は赦されない
「⋯⋯いや、俺のことは俊我と呼んでくれ」
「しー⋯⋯が?」
「では、私のことは変わらずにママと」
「あれは、ママじゃなくて上山⋯⋯さんだ」
「うえ⋯⋯」
「上山さん」
「うえやまさん」
強調するために上山のことを指差して復唱させていると、「何もそこまでしなくても」と言われたが、無視した。
「なんで、しーがをパパってよんじゃ、だめなの?」
上山のせいなのか、大河も疑問に思ってしまったようだ。
余計なことを言いやがって、と心の中で悪態を吐きながらも、
「お前の本当の親に会えた時、ややこしくなるだろう。それにパパとママと呼ぶのは本当の親にいっぱい言ってやれ」
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