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携帯端末を横に置いてあげ、鼻歌らしき歌をうたいながら描いていく大河のことを見つめていた。 『次のニュースです。先日、御月堂製薬会社前代表取締役の死亡を受けて、息子である御月堂慶氏が現社長に就任になったのを機に、お相手の華園院付属大学病院の一人娘である華園院雅氏との婚約が正式に発表されました』 つけっぱなしになっていたテレビからそのようなニュースが聞こえ、反射的にテレビを見やった。 同じ大学の学部であったから見たことがあった現社長と、思い出したくもない憎たらしい顔の令嬢の、今回のためだけに撮ったような写真が映り、医学界にさらなる期待と飛躍が訪れそうだと、何とも大げさなアナウンサーのコメントが寄せられていた。 この時が来てしまったか。 あれから何の連絡もなかったが、一旦は収まるところに収まり、そして、原型が留まらないぐらいにぐちゃぐちゃに混ぜるように乱すというわけか。 最悪、自分もろとも破滅の道を辿るというのに、こちらが思っていた以上に大胆なことをしでかす。 ある意味感心する。 「パパ?」 不意に呼ばれて、バッと大河のことを見た時、「あっ」と声を上げた。 「ごめんなさい⋯⋯。いっちゃった」 「あ、いや⋯⋯今まで俺がそう呼ばせていたのが悪い。⋯⋯で、どうしたんだ?」 「んと、ママ! ママかけたの!」 「みてみて!」と嬉々としてお絵描き帳を掲げてみせた。 ほぼ中央にこれでもかと大きな顔を描き、大ざっぱにされど特徴的な真ん中分けを黒で塗り、そして、にっこりとした表情で描いていた。 子ども特有の人物絵だ。 年相応だと思われる描き方にそれだけで微笑ましく思える。 『俊我さん』 目を見開いた。 ぱっと花が開いたかのようなあどけなく、無邪気な笑顔を向けた姿が重なった。 「あい⋯⋯が」 「しぅ、が?」

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