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ハッとし、「なんでもない」と言い訳するように誤魔化すように言った。
「⋯⋯ちゃんと特徴を捉えている。上手に描けているな」
「ほんとー?」
「ああ」
目をキラキラとさせる大河の小さな頭を撫でてあげると、「えへへ」と照れくさそうに笑った。
本当、笑い方がよく似ている。
胸が締め付けられたが、気づかないフリをして撫で続けた。
「もっといっぱいかくから、まってて!」
「ああ、待ってる」
次のページを捲り、楽しそうに描き始めた。
愛賀らしき人物と一回り小さい子どもらしき人物と、そして、三人目を描いている時、俊我のことをちらちら見てきた。
見られたくないのかもしれないと思った俊我は、置いていた携帯端末を手に取り、そちらに視線を向けた。
その時、ネットニュースで御月堂と雅の婚約発表の記事を見つけ、読んだ。
当たり障りなさそうな、ありきたりなコメントと共に、婚姻は来年だということが書かれていた。
来年⋯⋯その頃には大河は四歳となる。
その時に実行するのだろう。
「できたー! ねぇね、みてみて!」
顔を上げると、お絵描き帳をぐいぐい押し付けてくる。
「分かった、分かった」と描き上げた絵を見た時、目を疑った。
二人目までは恐らく、愛賀と大河であることは分かった。だが、この三人目を描いたのはきっと──。
「これがね、ほんとーのママで、こっちがたいが、それで、これがしぅがパパ!」
ああ、やっぱり。
染めている暇なんてないとずっと染めずにいたものだから、色が抜けていた。
そんな特徴的な髪色になっているから間違えではないと思ったが、何故俊我を描いたのか。
それを問うと、「んーとね」と大河が考えながら言った。
「ほんとーのパパのおしゃしんないから、かいたの。あとね、しぅがパパは、やさしくて、かっこよくて、たいがのパパみたいだから、いっしょにかいたの。パパはいやっていうけど、たいがのパパはしぅがパパなの」
裏表のない無邪気な笑顔で言われて、嬉しくないわけがない。
本来の形、本当の形はこの絵のようなのだから。
大河が描いた絵のように、皆が皆、笑顔で手を繋ぐことは一生ないことだけれども。
「⋯⋯大河、ありがとうな」
優しく抱擁することで、堪えきれなくなりそうな感情を無理やり押しとどめるのであった。
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