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「もういい、もう言わなくていい。俺が悪かった。変なことを訊いて悪かった。今言ったことは忘れてくれ」 ひっくとしゃくり声を上げてもなお、言い続ける大河に、悪かった、忘れてくれと言い聞かせ、泣き止むまで慰めていた。 「⋯⋯しゅ、がパパは、たいがのほんとうのパパなの⋯⋯?」 衝撃が走った。 落ち着いてきた大河にホッとしていたところを突かれたような感覚。 何故、そんなことを。 つい、その言葉を言いそうになり、ぐっと堪えた俊我は代わりの言葉を口にした。 「そんなわけがないだろう。前にも言っただろう、お前の本当の親はあのハニワ達と戦っていた人達だと」 「だって、それはアニメなんでしょう⋯⋯? アニメのキャラがたいがのおやになるのは、おかしいって⋯⋯」 その言い方は誰かに言われたような口ぶりだった。 大河の交流関係は限定的だ。だから、消去法で分かってしまうが、何故、そのようなことをわざわざ言ったのか。 俊我も含めて、こちらの勝手なる都合で産まれてしまった何にも知らない子どもに対して、そんな精神を追い詰めるようなことを。 「ねぇ⋯⋯しゅ、がパパは、たいがのパパなの?」 「⋯⋯っ」 「パパ⋯⋯おしごとしないで、ずっとたいがのそばにいて。こわいのから、まもって」 「⋯⋯」 今すぐにでも仕事を止めて、ずっと大河のそばにいてあげたかった。 前よりも投資の方も安定してきたから、家にいても問題がなかった。 だが、その安定がいつまでも続くという保証はない。大河の将来のための貯金にも回せないかもしれない。 だが、今はそれよりも最優先すべきことがあるだろう。 自分に言い聞かせ、それを実行しようと腕の中にいる大河のことを守ろうと、強く抱きしめた。

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