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155.
半ば意識がなくなりかけた頃、飛び上がらんばかりに目を開くととっくに起きていた様子の大河と目が合った。
「おはよう、大河。寝れたか」
置いたままになっていた手で撫でてあげると、遠慮がちに小さく頷いた。
この時、違和感を覚えた。
いつもならば笑顔いっぱいで元気よく挨拶を返してくれるのに、今日はそんな反応を見せる。
やはりそうだと思ってしまったが、そんなこと考えたくもなかった。
そのことにショックで放心状態になりそうな己を奮い立たし、小さく笑みを含ませた顔でこう言った。
「今から長めの散歩でもするか」
大きなショルダーバッグを肩にかけ、その反対の手を繋いだ大河と共に外へと繰り出していた。
大河は身支度を整えてもずっと抱きしめたままのハニワのぬいぐるみを脇に抱えて。
ほぼ大河と変わらない大きさのぬいぐるみであるため、その脇に抱えるのも大変なようで、「俺が持ってやろうか」と言っても頑として自分で持とうとするので、そのことも含めて時折、大河の様子を見ていた。
こういう時も、大河から微笑ましい色んな話をしてくれるのだが、今は俯いたまま一言も喋らずにいた。
「いつもより早くに起きていたな。まだ眠いか?」
「⋯⋯」
「前よりも暖かくなってきたとはいえ、朝はまだ寒いな。大河は寒くないか?」
「⋯⋯」
どうにか話題を振ってみるが、大河は聞こえてないかのようにぴくりとも反応せず、俯いたままだった。
ここまでくるとそろそろ現実と向き合わなければならない。
専門に診てもらった方がいいと普通は思うかもしれないが、大河の場合、それすらも難しい。
今も、大河がこうなった元凶から離れるために外に出ていて、そのような専門機関に行った際に居場所を知られるかもしれない。
小野河の製薬会社と繋がりのあった病院にでもと一瞬思ったが、世間にあのような悪評を広めてしまったのだ。その上、大河の存在を知られたくないため、容易に行けるはずがない。
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