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『⋯⋯何言ってんの?』 頭に血が昇り、けれども、冷静でいないとと、深く息を吐いていると、怪訝そうな声が聞こえてきた。 『あたしがあの世話係にそうしろと指示したと思っているの?』 「そうだろ。だから、あいつから逃げてきたんだ」 『⋯⋯そう。そういうこと』 事情は分かったと言ったように、そして、考えているようで少しの間が訪れた。 その間、俊我は雅の予想外の反応に拍子抜けをしていた。 雅がそう指示してないということが真実ならば、あの世話係が自ら勝手に大河に酷いことをしていたことになる。 何故、そんなことを。 上山と比べて圧倒的に違う接し方に、今度は混乱していた。 そんな心情を察してか、自分のことを話題にしていることに気づいてか、表情を忘れてしまった大河がこちらを見てきた。 気を逸らせようと、隣に置いていた等身大のぬいぐるみであるハニワを無理やり片手で持って左右に揺らしていると、『分かった』と独り言にも似た声が聞こえてきた。 『今日付けで解雇させておくわ。⋯⋯代わりの者でも寄越しておくけど』 「いやいい。俺が大河のことを育てる。それと、あの部屋も退去する。いつまでもお前に面倒を見てもらっているのは、癪だからな」 『⋯⋯おかしなことを言うのね。あんたの方はついでよ。全ては子どものため』 またも驚かされることを言ってきた。 「⋯⋯どういうことだ」と聞き返すと、一拍置いて雅は言った。 『⋯⋯子どもに罪はないでしょ』 「は⋯⋯? どの口が言う──」 『一週間後、落ち合うから』 一方的にそう言うと、切られた。 「⋯⋯いやどこにだ」 耳元で、プープーという音を聞きながらそう呟いていると、そばに来ていたらしい大河が遠慮がちにぬいぐるみを抱きついてきたことで、そちらに意識を向けた。 「⋯⋯とにかく、家を探さないとな」 掴んでいた手をその小さな頭に乗せ、撫でているとぼんやりと見つめてきたのを、小さく笑ってみせた。

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