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今までよりも狭く、その分安い物件を見つけ、住み始めた。 それから一週間後、あの後改めてメッセージで落ち合う場所から送られ、向かうこととなった。 大河も一緒にということだが、元々大河も連れて行くつもりだった。 しかし、大河にとって外に行かせることも酷かもしれないと思い、念のため「大河、外に出かけるがいいか? 大河が嫌であれば家でいいからな」と訊いてみると、迷うような素振りを見せた後、小さく頷いてみせた。 「⋯⋯無理に合わせなくていいからな。もし、出かけ先で家に帰りたいと思ったら、そうだな⋯⋯俺にしがみついて、首を横に振ってくれ。分かったか?」 「⋯⋯」 小さく頷いた大河に、「よし行くか」と頭を撫でた後、連れ出した。 大通りから外れ、住宅街が見え始めた所にそれはあった。 分かりやすく店の看板も掲げてなく、一見すると料理屋だと思えぬ建物であったが、玄関らしい扉を開けると、女将らしき人がこちらに深々と頭を下げた。 「小野河様でございますね。お待ちしておりました」 雅が事前に教えていたのだろうと思いつつも、大河が怯えているようで、繋いだ手に力が篭ったのが伝わった。 すぐさま大河のことを見やるが、もう片方の手で俊我の服を掴み、やや後ろに隠れて様子見をしているようで、帰りたいという意思を見せなかった。 「靴をお脱ぎになって、上がってください」 立ち上がりざまそう言う女将に言われて、靴を脱いだ俊我に続いて、恐る恐るながらも大河も靴を脱ぎ、そして、きちんと揃えた。 「えらいな、大河」 大河にとっても初めて来る場所できっと緊張と不安もあるはずだ。それなのに、教えてあげたことは忘れずにし、手放しに褒めてあげると、足にまとわりつくようにしがみついてきた。 表情こそは出ないものの、恐らく照れ隠しをしているのだろう。 「大河、そんなにしがみついたら諸共転んでしまう」と言うと、素直に離れてくれた。 改めて手を繋ぎ、微笑ましげに様子を見ていた女将の後をついて行き、ある部屋に通された。

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