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162.
公園に着くや否や、大河から手を離し、そそくさと遊具の方へ向かった。
急な行動に焦り、その後をすぐに追ったが、ブランコに乗ったことで安堵した。
「珍しいな。いつも砂場なのにな。ブランコ乗ってみたかったんだな」
まだギリギリ届かない高さで、その足をぶらぶらさせ、揺らそうとしている姿が可愛いと思いつつも、「後ろから押してやろうか」と後ろに回って背中を押してやった。
少しずつ高くなっていくのを、されど高くなりすぎないように調節しつつ、「楽しいか?」と声をかけた。
「あんた、ちゃんと世話ができるのね」
ブランコのそばにある背の低い柵に腰をかけていた雅が感心したような声で言ってきた。
「できるも何も、なんだかんだ四年も一緒にいるんだ。自然とやれるものだ」
「世話係に任せきりで、自由奔放にやっていると思っていたわ。意外と真面目ね」
「お前がいつまで経っても何も言ってこなかったから、仕方なくだ」
「あら、それはごめんなさいね」
軽い調子で言ってくる。
前と変わらぬ余裕そうな小馬鹿にした笑いをしてくるのを、調子が戻ってきたなと思っていると、大河が必死になって足を下ろしていることに気づき、「どうした」とブランコを止めた。
すると、下りた大河がまた走り出すものだから、その後を追うと、今度はすべり台の前に行った。
「今度はすべり台か。遊んでもいいが、階段を登るのを気をつけろよ」
見上げている大河にそう声をかけた時、服をくいくいと引っ張ってきた。
「なんだ、どうした」としゃがむが前にぐいと引っ張りつつも、歩きだそうとする大河に「危ないだろ」と言った。
そこで、俊我は気づいた。
「もしかして、俺と滑りたいのか?」
そう言うと、二度縦に首を振って、再びくいくい引っ張ってくるのを、「分かった分かった」と宥めた。
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