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寝付きの良くなかった大河が、今日は珍しくすぐに寝に入ったのを背中辺りをぽんぽんと優しく叩いてやりながら見ていた。
「⋯⋯今日は珍しくたくさん遊んだから、疲れたんだな」
久しぶりの公園で表情も出なくなって気づかなかったが、大河なりにはしゃいでいたのかと思ったが、どこまで自分の置かれた状況を理解しているのか分からないが、周りの空気を読んで大河も演じていたのかもしれないと思うと、こんな小さい子どもに気を遣わせてしまったと申し訳なさでいっぱいだった。
「⋯⋯俺ともういてはいけないな」
小さく口を開けて規則正しく眠る大河の頭を撫でながら、ぽつりと呟いた。
だが、大河はまだ大人の手を借りないと一人で生きられない年齢だ。
いくらしばらくは困らないであろう大河の通帳を持たせたとしても、生活面でできるわけがない。
雅のことを散々思ってきたが、自分も大概に勝手すぎる。
常日頃言い聞かせ、例の写真を見せていたあの母親の元にとも思うが、あれ以来、どこにいるのか見当もつかない。
最悪なことが頭の中で一瞬過ぎったが、きっとどこかで細々と生きているはずだ。
そう思いたいとやはり自分勝手な願望を抱く。
「⋯⋯大河は本当の母親と一緒にいるべきだ。どこにいるかは分からないが、捜し出して引き合わせる。⋯⋯無事に会えたその時は、今までの、俺と一緒にいたことは全て忘れてくれ。不幸にさせてしまったお前らは、誰よりも幸せになってくれ」
静かに眠る大河を優しく抱きしめ、俊我はそのまま眠りについた。
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