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170.
行ったことがない場所で疲れた。
付き合わされてそんな言葉が浮かんだ。
子どもが遊ぶような場所もなさそうだったため、「公園に行ってる」とだけ伝え、背後で何やら文句を言っているのを無視し、早々に立ち去った。
嫌になるほどの青空の下。
しかし、先ほどの息が詰まるような堅苦しい空間よりかは幾分良い方だと思いつつ、公園へと向かっていた。
「⋯⋯は⋯⋯?」
公園の出入り口付近だった。
昼間に同年代の男が突っ立って、公園の方をぼうっと眺めている不審な行動をしているなと思ったのも一瞬で、我が目を疑うこととなった。
あの風俗店で働かされていた時のようにやせ細っている印象を受けた。
生きててよかった。
それでもそう思った。
そう思うだけで充分だった。
しかし、欲が出てしまったようだ。今にも倒れそうな足取りでふらっと俊我らが来た方向とは真逆に行こうとする最愛だったオメガを呼び止めてしまった。
「御月堂さ──」
何故、その名が出てくるのか。
俊我が外した首輪とは違う首輪をしているのは、かつて憎かった相手と何か関係が。
「⋯⋯俊我、さん」
下げていたらしい何かを入れていた袋を落とす音で現実に引き戻された。
二度と会えないと思っていたオメガは、顔を引きつらせ、目の下には隈を作りながらも、憎悪のような目を向けてきた。
そうなるのは当たり前だ。何せ、このオメガはこちらの事情を一切知らず、急に赤ん坊だった大河を、幸せを奪ってしまったのだから。
極端な話、ここで刃を突き立てられてもおかしくない。
「こんな所で会えるとは思わなかったな。元気にしていたか?」
「⋯⋯どうして、僕に話しかけてくるの。僕はもう必要ないって言って、急に子どもを取り上げて、出て行ったクセに」
他愛のない話なんてもうできるはずがない。
そんなことは分かりきっていた。だから、誤魔化すように「その子どもがこれだ」と繋いだまま前へと促した。
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