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第11話

樵が目覚ましで目を覚ますと、テーブルにスポーツドリンクとメモがあった。 頭痛に顔をしかめながらメモをみると綺麗な字で「起きたら水分補給をしてください。泉」と書いてあった。 樵はショートメールで細貝に昨晩の事を問うと、たまたま居合わせて送っていってもらったと返された。 『あの話をしたのによく頼んだなお前…。』 『その事なんたが、ちゃんと話し合えよ。』 『はぁ?なんで?』 『なんでもだ。』 「はぁ、訳が分からん…。」 とりあえずネクタイとシャツを交換し、そのまま朝の支度をして出勤をした。 電車ではわざと時間をずらして出社した。 もう一緒に出勤も、昼食もしない。 そうでもしないと樵の心は持たなかった。 会社に着き、部署に入ると細貝が話しかける。 「おはよう、葛城。二日酔い大丈夫か?」 「おはよう。ちょっと痛いなぁ。」 「おはようございます、葛城さん。」 「…おはよう。」 何時ものように細貝に挨拶を返す樵は、凛太郎と目を合わせず淡白に挨拶をしてさっさとデスクへといってしまった。 それを気まずそうに細貝は凛太郎に慰めの言葉を送る。 「ま、頑張れよ。」 「…。」 その後も葛城は凛太郎を避け続けた。 「葛城さん、昼…。」 「ごめん、おれ今日もちょっと一人で食べる。」 樵は凛太郎の表情を見ること無くさっさと休憩室へ向かった。 ベンチでコーヒーをチビチビと飲んでいると、隣の女子更衣室から話し声が聞こえた。 「泉くん、彼女できちゃったねぇ。残念。」 「相手誰なんだろう?」 「私噂で聞いちゃったんだけど、社長の紹介でらしいよ。」 「えー、それってお見合い確定じゃん!」 「お見合い、か…。それなら、当たり前か。」 「何が当たり前なんですか?」 そう言って樵に話しかけたのは凛太郎だった。 樵は多少驚きはしたが、また笑顔でこたえた。 「なんでもないよ。それより、もう昼食べたの?俺は食べたから行くけど…。」 「食べてないですよね。」 「…食べたよ。」 「俺、葛城さんに付いてきたなんですけど。」 「食べたって…、それに、もう一緒に食べなくたって良いじゃん。もう相手できたんだから、俺と、食べる必要なんて、無いじゃん。電車だって、一人で良いじゃん…。」 「葛城さん…。」 「じゃあ、そう言うことだから。」 「葛城さん!」 横を通り過ぎようとする樵の腕を掴む。 凛太郎に掴まれ、顔が赤くなったのを俯いて隠す。 俯いたまま、葛城は消えそうな小さな声で言った。 「これ以上、俺をからかわないでくれ…。頼むからっ…。」 そう言い無理矢理腕を引き剥がして戻ってしまった樵を、凛太郎はただ見つめることしか出来なかった。

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