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其の参・鬼、西瓜を食す。(8)

 やがて、ずるずると地面に身体を擦りつけ、屋敷に戻ってきた主は、夜具まで辿り着いた。 「おお、かようなところにおったのか、伊助や」  大きな西瓜を前に、黄色い歯を見せてにやりと笑った。  もはや骨ばかりとなった細すぎる腕で西瓜を掴むと、主は大きな口を開け、がぶり、がぶりと硬い皮ごと、赤い果実を喰らう。  がぶり、じゅうじゅう。  主は西瓜のすべてを喰らいつくし、やがて夜が明ける頃。  穏やかな顔つきのまま息絶えている主の姿があったという。  ―鬼、西瓜を食す。・完―

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