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其の四・こいごころ。(2)
でも、こんなの気持ち悪いよね。
蒼のことを考えたら、こういうふうになるのって。
だってボクも蒼も男の子なんだ。
同じ性別で、しかも種族が違うのに、好きになっちゃうのはおかしい。
いけないことだ。
「心?」
ムズムズ、治まらない。
涙だって止まらない。
「どこか痛いのか?」
痛い。蒼を想う胸が痛いよ。
苦しいよ。
でも、こんなこと言えない。
言っちゃったら最後、もう一緒にお出かけもできなくなる。
でも、迷惑だよね。
ボクなんかと一緒にいちゃいけないよね。
よりによって蒼を好きになるなんて。
「ごめ、なさい」
「心? 何を謝って……ああ、これか」
蒼は何を思ったんだろう。
後ろから腕が伸びてきて、ムズムズしているボクに触れてきたんだ。
「やだっ!」
ボクは慌てた。
だってすごく優しい手つきで触ってきたから。
おしっこする場所だから汚いのに。
あまりにも慌てたから、牙を出しちゃったんだ。
蒼の綺麗な腕を噛んでしまった。
赤い血が流れていく。
……違う。傷つけるつもりなんてなかった。
ボクはただ、蒼にビックリして――。
「心、すまない。驚かせてしまったか」
大好きな人を傷付けてしまった。
ボクが狼狽えていると、蒼が申し訳なさそうに謝ってきた。
「……っつ!」
蒼は優しい。
怒らない。
ボクがどんなに邪魔者でも、蒼はいつもずっと一緒にいてくれる。
だから、だから……甘えていちゃいけないんだ。
そう、思った。
だからボクは猫又の姿に戻ると夜具から抜け出した。
座敷から出て、広いお庭を突っ切って走る。
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