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いつの間にか

ガヤガヤと賑やかな居酒屋の個室で、俺と従兄弟の息子「タクヤ」の二人は酒を酌み交わしていた。タクヤは昔から俺に良く懐いてくれて、今日はタクヤの就職祝で二人で来ている。 「いやぁ、タクヤも社会人かぁ。少し前まで小さい子供だったのになぁ。」 「それ、セイジさん以外にも言われた。」 仏頂面でそう話すタクヤ。 コイツは昔から表情をあまり出さない奴で友達も少ないからか、近所に住んでいる俺の家に暇があれば足を運び、時には寝泊まりもしていた。進路について親子喧嘩した時、俺の家に飛び込んできたのは良い思い出だ。 そんなタクヤが俺の目の前で酒を嗜んでいる、ただそれだけで嬉しい。 「そういえば、セイジさん。昔に俺と約束したことおぼえてる?」 「え、約束?なんか約束したっけなぁ……あ。」 思い出した。 タクヤが小学生の頃、俺に「大事な話がある」と随分と真剣な顔で話しかけてきた。 『セイジさん!俺、大人になったらセイジさんと一緒に暮らしたい!セイジさんを幸せにしたい!』 『嬉しいなぁ、じゃあタクヤが仕事するようになったら二人で暮らすか~。』 『本当に?!嘘じゃないよな?!絶対だぞ!』 あそこまではしゃぐタクヤは見たことがなくて、俺は二つ返事で了承してしまったが…まさかその事だろうか。しかし、タクヤは今大人だ。大人になった今、その理由がどう言うことなのか知っていて言っているのだろうか? 唖然としていると、いつの間にか俺の手を握り、容姿端麗なタクヤのキリッとした眼差しが俺をまっすぐ捕えていた。 「セイジさん、おまたせ。俺、ちゃんと約束守ったよ。」 「ちょ、ちょっと…待って、くれ…。」 酒を呑みすぎたのだろうか、胸の鼓動が激しくなって胸から上が熱くなっていくのを感じる。

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