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お堅い人は気付きもしない
此処は名の知れた大学病院。
私はそこの外科医として勤めているが、困ったことが一つ。
「お疲れ様です、名取先生。」
「ッ…!!」
昼休憩中、気を抜いていたところに背後から声をかけられ思わず飛び上がる。
後ろを振り向くと、一見爽やかそうだが実は腹の奥底にとんでもないものを持っている男が笑顔で俺を覗いていた。
「な、なんだね船橋君…、言っておくが、今は昼間だ。そして此処は人通りが少ないが開けていることを心にいれておけよ。」
「それって、誘ってます?」
「何故だ!?今の話で何故その言葉が出てくる!?」
この男はおかしい。老若男女問わず好かれる容姿端麗な顔立ちにして性格は歪んでおり、ことごとく私に悪戯をする。人気の少ないロッカー又は患者や他の看護師が居ない隙を狙っては私の唇を奪い、私の情けない反応を見て嘲笑うのだ。
今回もきっと私の反応を見るため何か悪戯をしに来たに違いない。
私が注意したことをもう忘れたのか、顔を近づけ唇を這わす。
何時もならすぐに離れるが何故か今回はすぐに離れず二度三度と繰り返した。
「ちょっ…船橋、く…んむっ…ッ!」
感じたことの無い感覚に脳が痺れそうだ。
此処は病院だ、もし誰かに見られでもしたらどうしてくれる。
そう怒鳴り付けたいのにこの男も私の体も言うことを聞かない。
いつの間に割って入ってきたのか彼の舌が私の口内をかき回した。
ようやく離れたと思い顔を見上げるといままで見たこともない顔で私のことを見つめていた。まるで視線で縛り上げられたかように身動きが取れなくなった。
あぁ、私の悩みが増えてしまった。
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