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僕の、僕だけの

自分の声が掻き消されるほどの声援、汗だくになるほどの熱気、目を細めたくなるほど眩しいスポットライト、皆が僕を見ている。 暗闇の中から何万人が僕を見つめている中、それでも僕は彼を見つけることが出来る。 両手には僕色のペンライト、肩には僕色のタオル、髪の毛先もネイルも全部僕色に染め上げている。 僕がまだアイドルに成りたての頃から僕を見ていてくれた、握手会も必ず来てくれてるのにファンとして深入りしすぎないようにしているのか消極的に手を差し出す。 「こ、コウキ君…今日も、格好良かったですっ…!」 「サカキさん!今回も来てくれてありがとう!」 今回も他のファンとは違い、指を絡めてギュッと握る。すると首元まで真っ赤になる、そんな彼が酷く可愛くて愛おしい。 周りのファンや関係者に見えないようにメモ用紙を忍ばせ握らせる。それが何なのかわからない彼はキョトンとした顔で僕を見る。あぁ、可愛い。 僕はわざとらしく口元に人差し指を押し付けて片目を閉じる。 「まだ見ちゃダメだよ?今夜、待ってるね…!」 「~っ…!ま、また来ます!がが、頑張ってください!」 「はーい!気を付けて帰ってね!」 何もない所で躓きながら走り去っていく彼を見送る。 もう少しで全部が僕のものになる。そう確信した僕は幸せに満ち溢れた顔で次のファンの相手をした。

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