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死んだ世界で死なない君と

崩壊した世界で男が一人、倒壊しかけていたビルの中を縫って入りながら食料を探していた。 埃を被った木箱の蓋をバコッと開けると中には大量の缶詰が入っていた。今回は当たりを引いたらしい。 男は期限良く口笛を吹きはじめた。 すると建物の置くから誰かが近付く。 「食料を見つけたのですね、マスター。」 「おう、これを保存しておけば冬を越す時の食料には困らん。お前と違って俺は飯を食わなきゃ死んじまうからなぁ~。俺もロイみたいにアンドロイドだったら一生二人で暮らせるのにぁ。」 そう言いながら男は近くの瓦礫に腰かけ外を眺めた。見渡す限り、倒壊したビルを覆い隠すように植物が伸びていた。男の隣にロイが座ると男は嬉しそうに笑った。そして話しかける。 「なぁ、ロイ。俺は普通の人間じゃないから、こんな荒廃した世界でお前と二人きりでいるのが幸せに思うんだ。きっと研究のしすぎだな、ようやくお前を作ったと思ったら世界が壊れちまった。でもお前が俺の隣にいればそれでいいかと思うんだ。きっと俺は普通じゃない。」 「確かに、マスターは普通ではありませんね。」 「手厳しいなぁ。」 ロイの冷たい対応に男が苦笑すると、ロイは続けた。 「そんな普通ではないマスターに作られたから、私も普通ではないのです。誰もいないこの世界で、マスターと私だけが暮らす。こんな幸せなことはないと思ってしまいました。私はただのアンドロイドなのに、可笑しいですね。」 そう微笑むロイは男の頬撫でる。 そのまま二人は崩壊した世界でキスをした。

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