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盗まれたもの、それは

某日、有名美術館の館長から通報を受けた。 どうやら最近世間を騒がせている怪盗から宣戦布告らしい。 現場に向かうと、館長が慌てながら青い薔薇が特徴的なカードを見せてくる。 ≪今宵、一番輝く素敵な宝石を頂戴します。 場所は○○美術館にて。             怪盗ニコラス ≫ 「恐らく、先日うちで展示され始めたブルーダイヤモンドの事でしょう…。」 「とにかく、そのブルーダイヤモンドの場所に警察隊を配置しましょう。既に出入り口には他の隊が張っています。」 館長の案内でブルーダイヤモンドが展示されているフロアに着くと、他のフロアの方からドタドタと慌ただしい音が聞こえる。 振り向くと、そこには何故か身ぐるみ剥がされ半裸になっている館長が真っ赤な顔でこちらを指差していた。 「そ、ソイツが怪盗だ!気を付けろ~!」 「何?!うっ!」 本物の館長が叫ぶと一気に煙幕が張られた。 皆がむせ込んでいると、誰かに抱き上げられる。 気付けば手足を縛り上げられており抵抗もできない。 煙幕が一気に晴れると、俺をまるで女性のように抱き上げている怪盗が姿を表した。 「はっはっは!怪盗ニコラス、今宵の宝石はもう頂いた!」 ブルーダイヤモンドに目をやると、盗まれてなどいなかった。 「ブルーダイヤモンドなど盗んでいないじゃないか!まさか巧妙な偽物か?!」 「何を仰るのですか刑事殿、今宵の獲物は貴方ですよ。」 「ぅんむっ?!」 そう言って怪盗を名乗る男は皆の見ている前で深く口付けをした。 分訳も分からず固まっていると、怪盗は不適な笑みを浮かべ言い放った。 「それでは諸君、さようなら。よい夢を。」 「ま、待て!放せ!!」 翌日新聞の大見出しに「怪盗ニコラスが盗んだのはまさかの刑事だった!?」と載っていたのを知るのは、俺が気絶をする直前の事だ。

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