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希望、幸福、健康、愛情

暖かい日が差し込む病院の中庭で、病衣を着た少年が何かを作っていた。 「できた!!」 完成した手元のそれを大事そうに抱え、走り出す。ここは病院だった。 遠くの方から看護師の叱り声が聞こえる。 「こら、セイタくん!走っちゃダメよ!ちょっと!」 セイタと呼ばれた少年は見向きもせず走り続け、やがてとある個室に着いていた。 ガラリと扉を開けると、ベッドの上で本を読む少年がいた。 その少年は肌も髪の毛も、瞳の色までも白かった。 読んでいる本は年齢にはそぐわない物を読んでいる。 本から目を外しセイタを見ると、優しく笑顔で話しかける。 「セイタ。自由に動けるようになったからって、あんまり走っちゃダメだよ?」 「そんなことより、ジャーン!」 セイタはからだの後ろに隠していたものを少年の頭に乗せた。 「わっ…!なに?…わぁ、花かんむりだ!」 「へへっ、シュンが前に中庭で見た白い花可愛くて好きだって言ったろ?お前に似合うと思って作ったんだぁ~。」 「僕のために作ってくれたんだ…えへへっ、嬉しい!…あ、これ!」 花冠を良く見たシュンはセイタに小さな葉を見せる。 「四つ葉のクローバーってね、幸運の葉っぱなんだよ。」 「へー、そうなんだ。じゃあ、それしおり?ってのにしてお守りにしようぜ!早く俺とシュンがいっぱい遊べますようにって!サッカーとか、缶けりとか…。」 「えへへっ、……ありがとう、セイタ…。」 「あ、泣くなって…。あーもう!」 「…ッ!ふぇっ…!?」 涙を流すシュンの顔を両手で掴み、セイタはシュンの唇めがけ己の唇を押し付けた。 咄嗟の事に驚くシュンにセイタが笑顔で話しかける。 「好きな奴にちゅーすると、元気を分けられるんだって!だから、俺の元気を分けた!」 「は、はわわ…あ、あり…が、とう…。」 「あ…で、でも…お前も俺の事好きじゃなかったら分けられないかな…。ごめんな…。」 「す、好きだよ…!…好き、だから…もう一回、して?」 今度は勢いに任せるのではなく、お互いゆっくりと唇を合わせた。

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