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同窓会

コロナも程程に収まり居酒屋に活気が戻って来た頃、高校の同窓会が開かれた。 銘柄の分からない焼酎を烏龍茶で割ったチープなものを少しずつ飲みながら、話が盛り上がっている方を見つめる。 目線の先には昔と変わらない爽やかさを持った彼が話の輪の中心で笑っていた。 影の薄い僕にも嫌な顔ひとつせず話しかけてくれていた、誰にでも優しい生徒会長だった。 僕は彼が好きだ。 十年立った今でも彼の事が好きで、気付けば28歳の今でも恋人ひとり作らず思い続けた。 本当は来たくなかったこの同窓会も彼に会うためだけに来たと言っても過言ではない。 話をしている彼が僕に気付いて軽く手を降ってきた時、キラリと輝く薬指の指輪を僕は見逃せなかった。 思わず目をそらして立ち上がる。 「ちょっと、煙草…。」 誰も聞いていないのにボソリと呟いて外に出る。 もう11月だ、口からは白い息が出て鼻先と火照る頬を赤く染めた。 煙草を1本咥えてライターを取り出すが、中々火が着かない。 ようやく煙草に火が移り胸いっぱいに吸うと、苦い煙が充満する。 身体には毒でしかない煙草。 きっと叶わないこの気持ちも毒なんだろうか。 口唇から出ていく煙が夜空に消えていく。 「寒いなぁ…、ほんと。」 この独り言は誰にも届かない。 今も残るこの気持ちでさえ煙草の煙のように消え去ってしまえば良いのに、胸の辺りに纏わりつく。 涙が出るのは煙草の煙が目に染みたせいだろう。 乱暴に目元を拭いて、荷物をとりに店へ戻った。

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