34 / 36
夏の終わり、世界の終わり
夏の終わり、窓枠の外から見えるどこまでも続く空に大きな入道雲と日が煌々と差す太陽は徐々に無くなって、すこし涼しい風がカーテンを揺らし夕方にはヒグラシの声が響く。
花壇に植えられたひまわりは段々と萎れ、下を向いて種を落としていたのを思い出した。
小さい頃から難病を患い、医者から言われたのは「二十歳まで持つかどうか」。
現代の医療は本当に発展しているようで、もう少しで19歳になると言うのに今はもうベッドから起き上がることさえ難しくなってしまった。
いつからか、家族はそんな僕を見捨てたように見舞いには来なくなった。
たった一人だけの病室で毎日本を読む。
この本は僕の幼馴染が持ってきてくれたものだ。
彼は小さな頃は破天荒で、外傷を負って入院しに来たのにも関わらず足の骨がくっついた途端に病院内を走り回るほどだった。
そんな時いたずらに僕の病室内に入ってきたのが始まりだ。
それから彼は僕の元へ来ては外の話をしてくれた。
退院した後も彼は足しげく僕の元へ通い、見舞いに来ては僕の好きそうな本を一冊持ってきてくれるのだ。
次に持ってくる時には本の感想を二人で語らう、僕はそんな日々が好きで好きで堪らなかった。
それが僕の世界だった。
病室の扉がゆっくりと開く。
看護師だろうか?
そう思って顔を向けると彼だった。
手元には見舞いにしては大きな花束が抱えらている。
「よ。」
「来てくれてありがとう。花束、随分大きいけど、何用?」
「プロポーズ用。」
彼は即答した。
僕は彼の返答に少しほんの少しだけ絶望した。
そうだ、彼の世界はここだけじゃない。
きっと素敵な女性がいるのだろう。
僕は笑顔で話を続けた。
「これからプロポーズするんだ?成功したら僕にも会わせてね。」
「何言ってんだよ、お前にだよ。」
「え?」
「お前もうすぐで19だろ?お前の誕生日に同性婚の届出して、俺と家族になろうぜ。」
まさかそんなことと思っておらず僕は横になったまま涙を流した。
そんな嬉しいことがあって良いのだろうか?
彼の手にはもう一つあったようでそれを開いてシルバーのリングを差し出す。
僕が左手を差し出すと、ゆっくりと薬指にはめて、唇にキスを落とした。
「愛してる。」
それから少し経って秋が深まった頃、彼は写真越しに僕へキスをする。
彼からは見えない僕は隣で幸せに微笑んだ。
ともだちにシェアしよう!