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 北口はどこでもくつろげる男だった。今も俺のベッドの上で胡座をかき、缶ビールを飲んでいる。家の主であるはずの俺は床に正座で座っていた。 「芦屋、そんな緊張すんなよ」 「それ俺の台詞だと思うんですけど」  北口の顔が赤い。意外と酒に弱いのでは、と思いながら見つめていると目が合った。 「お前さ、一口も飲めねえの?」 「多分。代々下戸なんで」 「ちょっと試してみろよ」  北口はビールを含むと、俺の後頭部を引き寄せた。口移しで苦い液体が入ってくる。 「んっ……」 「あーあー、溢れてるぞ」  口の端を舐められて思わず体が跳ねた。 「どうだ?」 「どうって言われても……」  このふわふわとした気分はアルコールのせいなのか、それとも北口のせいなのか分からなかった。 「もっとやるよ」  北口の唾液と舌が絡む。流れ込んでくるビールは苦いばかりではなかった。 「んっ、ふ……ぅ」  濡れた音が部屋に響く。うなじをなぞられ深く舌を絡める。酒臭いキスだった。 「飲めるじゃねえか」と至近距離で囁かれる。 「……北口さんからの口移しじゃないと飲めないです」 「可愛いこと言いやがって」  北口は俺を床に押し倒した。シャツの裾から手を差し入れられ、俺は思わず吐息を漏らす。 「身体熱いな」  北口も興奮しているようだった。荒い吐息が素肌に掛かるたびにゾクゾクする。乳首をこねくり回され、俺は北口の首にすがりついた。 「んッ、あ……ッ」 「芦屋、舌出せ」  言われるがまま差し出すと甘く噛まれた。舌を絡めながら北口は胸の突起も愛撫する。 「んんっ、ぁ、や……っ」  荒々しい手つきで俺の身体を暴いていく。北口のこんな姿は今まで見たことがなかった。 「……悪い、もう我慢できねえわ」  北口は俺のズボンを下着ごと引きずり下ろした。勃起したそれが露わになる。 「あっ、だめ……っ」  手で隠そうとするが簡単に払われた。性急に扱かれると先走りの液が溢れてくる。粘着質な音が耳につくたび羞恥で死にそうになった。 「あ、あぁっ、も、イっちゃいますから……っ」 「一回出しとけ」  先端をぐりっと擦られて、俺は呆気なく達してしまった。北口のシャツに白濁が飛び散る。 「あー、これ高かったのに」 「……だって北口さんが」 「まあそうだな、俺のせいだな」  北口はそれを潤滑油にして後孔に指を入れた。 「いっ、ん……っ、あっ」  最初は違和感しかなかったが、徐々に快感を覚え始めた。北口の指は的確に前立腺を刺激する。 「あ、あっ、だめ……っ」  二本に増やされた指でかき混ぜられ、俺は再び達した。それでも北口は手を止めなかった。執拗に中を責め立てられる。 「そ、それやだ……っ、またイく……っ」  俺はびくびくと達し続けた。そろそろいいかと指を引き抜かれる頃には、もう息も絶え絶えだった。 「なあ、芦屋」 「……何ですか」 「ゴムある?」  俺はぐったりとしながら棚を指差した。 「……上から二番目の引き出し」  あったあったと間抜けな声を上げて、北口はゴムを装着した。本当に何でこんな展開になってしまったのだだろう。 「挿れるぞ。痛かったら言えよ?」  熱くて硬いものが入ってくる。俺はその質量に息を呑んだ。 「きっついな……」 「そりゃそうですよ……んぁっ」  北口は額に汗を滲ませながら腰を進めた。 「……大丈夫か?」  全て収まる頃には二人とも汗まみれだった。慣らすようにゆっくりとしたストロークで腰を揺らし始める。 「んっ、あ……っ」  太くなったそれが中を擦る。最初は苦しいだけだったが、徐々に別の感覚が生まれ始めた。 「北口さん……っ」  息を荒げながら見上げると、北口は俺の唇に吸い付いた。 「んんっ、ふぅ……、ん……っ」  腰を打ち付けながら舌を絡められる。俺は北口の背中にしがみついた。 「もっと声出していいから」 「んっ、でも……あッ」  いいところを擦られて、俺は思わず声を上げる。北口は嬉しそうに笑って腰を振った。 「んあッ、そこ、いい……ッ」  北口はそこを執拗に責め立てる。何度も突かれると俺は喘ぎ声が止められなくなった。 「あっ、だめっ、それ……んあぁっ」 「ダメじゃねえだろ?」  奥を突かれて俺は背中を反らした。 「んっ、北口さんの奥まで来てる……っ」 「俺の何が奥まで来てるって?」  言いながら強く突き上げられ、俺は悲鳴じみた声を上げた。 「北口さんの固くて熱いの……っ」  そう、と北口は奥まで押し込んだ。俺はシーツを握り締めながら身悶える。 「ああぁ……ッ、やぁっ、んあっ、深い……ッ」  目の前がチカチカする。中のものが一際大きくなったかと思えば、次の瞬間熱いものが注がれる。 「はっ、あっ、んあぁ……ッ」  ずるりとそれが引き抜かれると、栓を失ったそこから精液が溢れ出た。 「……っなんで、ゴムは?」 「悪い、破れたみたい」  サイズが合ってなかったんだよな、と北口は嘯いた。俺の腕をつかんで立ち上がる。 「掻き出してやるから」  風呂どこと聞かれて案内する。全身が怠かったが処理をしなければならない。 「それにしてもお前才能あるよ。あんなによがるなんて思わなかった」  一応悪いとは思っているらしい。北口は白濁を掻き出すと、俺の体をシャワーで流していった。 「……北口さんこそ手慣れてましたよね」 「だって俺どっちもいけるもん」  それは知らなかった。へえ、とうなずきながら俺は眠気に襲われていた。シャワーが気持ちいい。 「お前そこで寝るんじゃねえぞ」 「んー……」  しょうがねえな、と抱きかかえられる。そこで意識は途絶えた。

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