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第5話 家へ向かうまでの話

居酒屋から出てそれぞれ帰路に着く 熊田先輩は馬渕先輩を支えながら うさ先輩は眼鏡をかけた男の人が迎えに来ていた 彗ちゃんはというとオレの背中で寝息をたてている おぶった瞬間全体重を預けて寝たのだ 横目でみると伸ばした前髪が息で揺れている 彗ちゃんにしては相当飲んだのだろう 顔もほんのりと赤い 「じゃあ、みんな気をつけて帰れよー!」 「んへへーじゃな〜また集まろうぜ〜!」 呆れる熊田先輩に支えられてひらひらと手を振る馬渕先輩 いつもこんな感じなのだろうか 「ほなまたねー!わいも迎え来てるみたいやから帰るわ〜。」 にいちゃんお待たせ〜といってうさ先輩は上機嫌で男の人のところへ駆けて行った あの人お兄さんだったんだ 抱きついてるし仲良いいんだなぁ あ、でも、お兄さんちょっと嫌がってるや さて 「オレたちも帰ろっか」 「……すぅ」 ぐっすりな彗ちゃんから返事が返ってくるわけは当然なく 声をかけても起きる気配もなさそう 「ふふ、かわいいなぁ」 ほっぺにキス、できそう…って ダメダメダメ!! 寝込みを襲うみたいなっ そういえば、さっきの…なんか慣れてたなぁ… なんで、どうして… 一緒にいない間に何があったんだろう 知らない間に大人になっちゃったんだろうか 「彗ちゃん……」 遠くに行かないで… もう、置いていかないで… いっそのこと誰にも見つからないところに隠してしまえば… オレだけのものに… 「あーー、だめだめ! はぁ…酔ってるなぁ…」 閉じ込めてしまったりしたら彗ちゃんが夜空を見れなくなってしまう そしたら、彗ちゃんの目に映った綺麗な星も 「…帰ろう」 起こさないように背負いなおす こんな状態の彗ちゃんを1人にしておくわけにもいかないし とりあえず近いオレの家、かな 冷たい夜風で頭を冷やしながらゆっくりと自宅へ歩き出した

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